8月19日(月)    その1
〜シャモニー(Chamonix)の一日、ガレ場のインデックス(L´Index)から軽くぶっ飛びのはずが・・・、氷河のテイクオフ・グランモンテ(GrandsMontets3275m)からシャチョー、Y沼さんパシー(Passy)へ移動成功、Y沼さんトップランでクラッシュ、ヘリ出動〜
今日は、7時に集合してシャモニーへ向かう。シャモニーは午前エリアなのだ。標高3300m、氷河のテイクオフ・グランモンテが待っている。

だが田村は、前回ヨーロッパツアーの時の印象からなんとなくシャモニーが不安だった。特別に怖かったことがあったわけではない。でもエリアとしては自分には激しすぎる気がしたしその圧倒的な景観も飛ぶとなればプレッシャーに変わる。おまけに観光で登ったエギュ・ド・ミディで高山病になって疲労も加わり、頭痛・発熱・めまい・嘔吐と、もうたいへんだったのだ。(それでも翌日ふらふらになりながら飛んだことは言うまでもない)
                                    
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移動車中、モンブラン山頂からテイクオフしたらしいパラで見えた。「レンズ雲出るくらい風強いのに、すげえな」と宮田さんが言った。『えーっ、強風?やだよ、ただでさえ怖いのに』と不安に拍車がかかる。おまに着いた時は吐く息が白くなるくらい寒くてドキドキは高まる一方。ランディングで元PG女子世界チャンピオン・サンディ・コシュパンと今日の山岳フライトに同行してくれるガイドのおじさんにご挨拶。カッコいいサンディ・コシュパンに少し気が紛れる。2人はエディと今日のフライトプランを話しあい、まず1本インデックスと呼ばれる場所から慣らしのぶっ飛びをすることになった。



インデックスは、プランプラの5-6キロ北東、谷の奥がわにある。あまり聞いたことないと思っていたらやっぱり整備されたちゃんとしたテイクオフがあるわけじゃなくて、単にリフト近くの斜面のガレバから出られるというだけだ。インデックスのリフトを降りたところは灰色の乾いた岩とガレバ。スタチンしたらすっごく痛そうな岩がごろごろで低木もない荒涼とした風景だ。斜面はなだらで朝早いせいか無風に近い。富士山ほどひどくはないが尖ったこぶし大のとげとげ石がラインを引っ掛けそうだし、転びそう。田村は緑のリゾートテイクオフが好きのなのだ。こういうテイクオフはちょっと遠慮したい。


天気はランディングの寒さが嘘のように好転し、目前のモンブランは朝の透明度の高い大気を通して鮮やかに白い。コンディションはぶっ飛びには絶好だった。(でもテイクオフが・・・)ガイドのおじさんが、早めに出て、あまり粘らないで10時半か11時には降りてグランモンテに移動する、というようなことを指示した。ちろんエディが通訳してくれている。言われたことには素直な田村はいつもの調子でとっとと準備したらなぜか一番にセットアップが完了してしまい(みんな、準備遅すぎ!)、「自分が先に行きますから」と言っていた宮田さんが「じゃあ、田村さんからいきましょうか」っておいおい、話しが違ぞっ!ここにいるのは我々だけでまだ誰も(ジモピーさえも)飛んでないし、ランディグまでのコース聞いてないし、ただでさえ緊張してるのに私がダミー?これだけ野郎がいるのに?でもそんな心の声はガイドのおじさんにはもちろん聞こえい。状況からみればどう考えても私からだ。(技量に対する斟酌を初対面のおじさんに求めても無理だろう)ガイドのおじさんが立ち位置をもっとキャノピー近くにしろと手招きし、エディとふたりでラインが岩に引っかからないようにとキャノピーの上にまとめてくれる。でもこれだとテンションかかるタイミングがいつもと変わってくるはず。一発で決められるだろうか?転んだらまあ擦過傷くらいは覚悟だな。
空を見上げて深呼吸、ゆっくり振返って後方の風を確認して、意を決して走り出す。

いつもよりワンテンポ遅れてテンションがかかる。弱いけど行けそうな感じ、前傾して加速、
揚力ぎりぎりだったがテイクオフ成功!(やったね)。




大気は安定していて、出てしまえば問題なし。座り直して安堵の深い息。ぶっ飛びコースはテイクオフまっしぐら。でもちょっと岸壁に寄ったコースをとると、穏やかなリフト。
後ろを振り返るとまだ誰も出てこないのでちょっと拾って待っていよう、と狭い範囲で8の字していると、意外としっかりしている。だんだん回せそうな気になってきたので、思い切って回してみると手ごたえあり。岸壁までは機体1-2機分しかあいていないが、風は安定でたたかれる心配はなさそう。『早く誰かこないかなあ、上がりそうなんだけど一人であがっちゃったらやだなあ』シャチョーとY沼さんの機体が見えた。Y沼機はすぐ追いついてきた。カトちゃんがちょっと低い。どうも昨日のことで岸壁に近寄れなくなったようだ。田村が適当なところまであげて、さてどうしよう、と思っているとタイミングよくランディングから川地さんの無線「田村さん、いい感じで上がってるね。そのまま上げたらプランプラの先までトランジットしてみましょうか。ケーブルに注意して・・・」先をみるとプランプラ近辺でタンデム機や講習機がステイしている。じゃあもう少しあげてみますか、と尖った岸壁際を小さめに回して(われながらいつの間にこんな怖いことができるようになったのか不思議だ)、動き出す。オーッ!プランプラ一番乗りだあ、機嫌よくどんどん先までいく。


プランプラのあたりでカフェの観光客の頭をかすめながら飛んでいるとシャチョーがきたのでしばらく絡みながら粘る。今日のシャモニーは怖くないなーー、モンブランもくっきりだし、
好きになれそう、なんて思ってぷかぷか浮いていたら「そろそろ降りてください、グランモンテ行きますよ」の指示。そうだ、ぶっ飛びのはずだったのに結構飛んでしまった。(この日のはなし 続く・・・)

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