8月20日(火)
〜アネシー(Annecy)名物わかさぎのてんぷら、強風ではまりかけあわてたぶっ飛び〜  
 
予報ではもう少し天候の崩れが遅いはずだったのに、午前中からなんだか怪しい空模様。今日は少し遅めの出発で10時ごろ集合となっていた。この合宿中は、夜のミーティングの最後に、次の日は何時出発と決めて、それまでめいめい勝手に朝食をとったりしていた。田村はお金の両替(なんと合宿しスタートから3日たってもまだ両替すらしていない!)をしに郵便局へいったり、大好きなスーパーマーケット回りをしたかったので早めに一人で朝食。朝のメニューは1週間ずっと、オレンジジュース、カフェオレ、クロワッサン、ハム、チーズ、フランスパンのお決まりだ。カフェオレはショコラに変えることもできるのだが、みんなが聞かれても「カフェ」しか言わないので黙っていてもカフェオレがでてくるようになってしまった。一人食べ終わってカフェオレのお替りをもらっている頃に、みんなも下りてきてやはり両替に行くという。



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モリジンの街は谷の下にあって(アルプスの街は大抵そうだと思うが)、山の斜面沿いの高いところから、谷の一番下の川まで町全体が逆三角▽の地形になっている。我々のホテルは一番山側すなわち一番高い位置にあって、街の中心地までは坂を下るかっこうになる。歩いて10分ほどの谷底におりて郵便局を探す。シャチョーは度胸満点の英語で通行人に道を聞く。この人の英語力は、私とどっこいでぜんぜんたいしたことないが(おっと、失礼!)いざというときの意志疎通力が抜群だ。空港でロストバゲッジしたときも英語で職員にくってかかっていた。「サバイバル英語術」を地でいっている。


郵便局で両替して、ようやく買い物できるようになったのでスーパーに行く。ミネラルウォーターやら果物(シャチョーはとっても果物好きのようだ)やらクッキー(ウメさんとカトちゃんは甘いもの好き)を買い込んで、ついでにモリジン周辺地図と洗濯洗剤まで買ってホテルに帰ったら、集合時間を少し過ぎていた。ちなみにこの時買った地図はモリジン周辺のものではなく、シャモニーのものだったと後から気付く。おかげで田村はこのツアーで地図を3種類も買うことになった。モリジン近辺1/25000、シャモニー1/100000、アネシー1/100000。しかし行ったエリアがすべて網羅できてこうして合宿日記を書くのに役立っている。

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アネシーまでは車で1時間半くらい。着いた頃には空はどんより曇り空で、晴れた夏の日にはトップレスで日光浴しているお姉ちゃんがいると誰かが嬉しそうに説明していた白いビーチにも人はまばらだった。ぶっ飛びくらいはいけるかもしれないけど、どうみても良くない。美味しいと評判のパン屋さんによってそれぞれパンを仕入れて、ランディングを見にいく。ここのランディング(プランフェ・エリアのメインランらしい)は十分広いが、一番高度処理をしたくなるような場所にクレイジーファーマーの家がある。川地さんに言わせるとクレイジーファーマーは、グリンデルワルドだけでなく世界中にいるんだそうな(?)ランディングの淵に電線がっているのもちょっと嫌。でも大きなパラショップが2-3件もあって、フライヤーもたくさんいて晴れてれば楽しそうなところだ。


曇りで風も悪いのでジモピーも飛んでおらず、ショップ近辺に大勢たむろしている。することもないので、ショップをぶらぶらみて回って時間をすごす。今回のメンバーは買い物に走る人がいないのでなんとなく手持ち無沙汰な感じ。

宮田さんが「わかさぎのテンプラでも食べにいきましょうか」というので、初めての(そして唯一となった)外食。わかさぎが食べきれないほどでてくるらしい。レストランはやはり湖東側で席はほとんどオープンテラス木の下にあるテーブルにクロスを広げると少しだけリゾート気分。他の観光客のオーダーを覗くとワカサギの天ぷらが山のように盛られているので、人数分頼むのはやめて2皿にしておいた。川地さんは「あんまり食べられないから、あっさりしたもの」なんて珍しいことを言ってテンプラは避けて、スカンピのアメリケーヌソースグラタンのようなものをオーダーした。


実はこれが一番美味だったのだが、海老の濃厚なソースに川地さんはちょっと引き気味。川地さんみたいな普段 賑やかで騒々しくて元気な人が、調子悪そうだとすごくかわいそうに思える。早く元気にならないかな、でも元気になったらまたあの口の悪さでなに言われるか分からないけど。でもその美味しいスカンピはおかげでみんなのおなかに納まることになった。肝心のワカサギの
テンプラは、ホントにテンプラみたいであっさりしていて美味しいが、30cmのさらに山盛りも食べられるわけはなく、シェアして正解。食事をしていると雨がパラついてきて、木の下に席を寄せてワカサギを突っつく。飛べないときはみんな、行動がゆっくりだ。時間をかけて食事をして、昨日のヘリの話しやエディのパシー山中駆け巡り苦労談で結構な時間がすぎた。と、いつの間にか雨は止まっていてぶっ飛びながらも飛んでいる機体が見えた。これはもう行くしかないでしょ、ってことでテイクオフに移動する。

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アネシーにはテイクオフがいくつかあるが、ぶっ飛びコンなので湖の東南側にある高い方からでることにする。車からおりて5分ほど坂を上る。すでにスクール生が大勢きている。でも広げている人はあまりいない。風は少し強めに入っていて、雨の匂いがする。天候急変の予感がした。こういうときは早めにでるに限る、と急いで準備。川地さんに続いて出ることにする。タンデム屋の機体が出ていく合間にささっと広げテイクオフ。強めの風で勝手に浮く。普段、このエリアは右側の北東方向から風が入ってくることが多いと聞いていいた。テイクオフ近辺には強風で浮いている機体が7―8機。この時、出るのを急いであまり何も考えず、風が左からきていることをぜんぜん考慮せず、適当に右側に回りこんでリッジを取ろうとし、ふと気がつくとやばい状況になっていた。機体が流されてテイクオフ右側にどんどん後退してしまい前へ出ない!



時々機体が右奥にもっていかれノーコン状態。沈下は3.0〜4.0もあって沈む一方。ランディングは風上側のどこかの湖畔だが(ショップのあるメインとは別のランディング)一度見に行ったにもかかわらず位置関係がすっかり分からなくなっていた。山チン?アウトラン?あまり考えたくない想像が頭をよぎる。最悪の場合を想定し、山の中腹の牧草地を緊急ランとして頭のなかにインプット。とにかく前に出さなきゃ、とアクセル全開で真剣モード。田村のドジにテイクオフの宮田さんが気付いて「もうちょっと左のコースをとりましょう、湖側じゃなくてもう少し山がわね、大丈夫届きます。」と無線をいれてくれた。あれがなかったら、本当に山の中腹を狙ったかもしれない。宮田さんの丁寧な誘導でなんとか山から離れられたが、風はますます強く、今度はランディングが確認できない。他の機体は私があれがランディングだと思っているところからはるか離れたところに向かっている。どこに行くかしらないけど同じところに行ったほうが無難そうだな。
「田村、ランディングがどこか分からないので他の機体が降りるあたりに適当に下ろしちゃいます」と無線を入れ、(かなり情けない話だ)タンデム屋さんたちに付いていく。田村がはまっている間にシャチョーも出たらしく、でもやはり状況が分かってなくてリッジで上げモードに入っていて、宮田さんに「強風で出られなくなるから上げないで前にだしてください」とか言われていた。カトちゃんは結局でなかった。(それが賢明だったかも)


ジモピーの機体も全部、湖南の牧草地を目指し、2箇所に別れて降ろしている。どっちがいいのかわからないので、大勢がおろしているほうを選択し、ランディング体制に。いつの間にかエディもここに降ろしていたらしく無線でアドバイスしてくれる。川地さんもシャチョーもいて『なんだ、結局みんなここへ降ろしたんだ』と一安心。ショップの人らしき女性が英語で、「ここはプライベートランディングで、オフィシャルは向こうです。」とかなんとか言ってきた。あー、じゃあもうひとつのほうに下ろしたほうが良かったんだ、と思ったが4人も降りてしまったんだからしかたない。エディが適当に受け答えしてくれている。別に怒られたわけじゃないけど、とっとと片付けたほうがよさそうだ。


ランディング脇の建物はパラショップで、エディが愛想よくショップの人と話しいているのをいいことに、ここで宮田さんたちが車で下山してくるのを待つ。こういうとき、エディがいてくれてホントによかったと思う。風はますます強くなり雨も混じってきた。アネシーのすぐ北の空に前線が見える。突風がきて、ランディングの木の葉を嵐のように舞い散らし、タンデムの看板を吹き倒して行った。「降りててよかった」とシャチョーが言った。
                              

アネシータウンからの帰路は渋滞していて、みんな無口。そろそろ合宿の疲れもたまってきた頃だ。
                                      

今夜のメニュはホテルも魚。白身魚のカツとフリッターのクリームソース。珍しく肉を食べない1日だった。



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