8月24日(土)
〜スイス・ベルヌ-ブ(Villeneuve)のREDBULLアクロバット大会観戦、加藤豪&柏木の日本チーム無念の失格、マイク・クングの神業的フライト、ハングの超正確ランディング! そして帰国〜

部屋を整理して荷物をまとめると急に寂しくなる。あと1週間この合宿を続けろと言われたら体力と神経がもたないが。

荷物をまとめて1階に降りる。ホテルのマダムがいつものように涼やかな声で 「Bonjour」と声をかけてくれる。彼女が朝一番に発する「Bonjour」という言葉の響きはとても素敵だ。彼女にも初日からずいぶん良くしてもらった。田村の拙い英語を真剣に聞き取り、自分も英語がそれほど堪能ではないので辞書をくりながら一生懸命説明してくれた。ロスバゲの催促電話もこちらが頼む前からしてくれた。このホテルの名前が読めなくて、でも覚えておきたかったので「どう発音するの?」と尋ねたら日本人には難しい発音だと思ったのか一音一音区切って丁寧に教えてくれた。
この2号室は山側のランディングに面しており、他の2階の部屋と共有で大きなベランダがついている。他の部屋と地続きだから防犯上ちょっと心配だったが、ランディングの人に声をかけたり、1Fのカフェの賑わいを聞いたりと楽しく使わせてもらった。
夜、戸板を閉めるときにベランダの端に立ってラシャショーの影を見上げながら、なんども明日の好天とフライトの無事を祈った。これまで10数回も海外フライトにきているがこれほど条件に恵まれフライトが充実したツアーはなかった。自分の実力の倍くらいは飛ばせてもらった。Something Great に感謝せずにはいられない。

出発の時間になった。宮田さんたちの引き上げ荷物もあるから車は荷物だらけで積むのが大変。マダムとステファンと部屋係りの女性が3人で外に出て最後まで見送ってくれる。
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今日はこれからベルヌーブでアクロの大会をみて、夕方空港へ向かうことになっている。エディが「飛ぶ気なら今日も飛べますよ」と誘ってくれる。ベルヌーブでフリーフライトもできるらしい。パッキングしなおしも面倒だし、これから飛行機のるのに汗かくのもなあ、でもエリアみたら飛びたくなるかもしれないし・・・。着いたときの状況次第ってことで、車はレマン湖方面へ向かう。エビアンなどレマン湖沿いの街をいくつか抜け、ベルヌーブに着いた。予想外の渋滞があって予定より少し時間がかかったようだ。街中は駐車車両でいっぱいで止めるところを探すのにちょっとうろうろする。

アクロの大会会場である湖畔には想像以上に人が出ていて大会規模の大きさにちょっと驚く。いつの間にかという感じで競技が始まった。朝霧でテっちゃんが四六時中スパイラルとかSATをやってるから見慣れてはいるが、連続技でやってくれるから面白い。最後に見事に湖上のボードにランディングする人、水ポチャする人、レベルもまちまちでそれもまた楽しい。ベルヌーブのテイクオフからはフリーフライトの機体もでているが、今日は大会見物に徹することにする。

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大会会場にはスポンサーのレッド・ブルの売店をはじめ、ソーセージやポテトやアイスクリームの屋台もたくさんでていた。あんこ屋さんの木下さんに頼まれていたレッド・ブルのTシャツを買った。ここはスイスだが一応ユーロも使える。大会会場の外の一角にパラメーカーブースもたくさんあって、会場をうろつくだけでも楽しく過ごせる。PWCの日に会えたゆう子さん一家もきていた。リサがアイスを買いに行くというので一緒に行って田村の分もフランス語でオーダーしてもらった。日本人フライヤーのグループにも遭遇した。丹那で飛んでる人たちだ。その中に女性が一人いて(2002年後半に一気にブレイクした福岡聖子ちゃんでした)結構目立つくらいの美人で、その彼女がなんとアクロをやるのだというから驚き!お友達になりたいなあ、と思って話かけたら気さくで感じのいい人だ。朝霧にもくることがあるといってたからまたいつか会えるだろう。テっちゃんとアクロ合戦をやってくれたら楽しいだろうな。
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加藤豪とカッシーの日本チームは昨日失格になったという。演技自体は問題なかったのだが、ランディング直後のカッシーに、豪が突っ込んで、危険行為とみなされてしまったのだ。今日はどうかな?みんなが注目する中、二人が飛んできた。いくつかの技を無難にこなして、たぶん豪がヘリコプターかなにかに入れようとしたとき、キャノピーが大きくタッキングして(いったい何がおきたのかわからなかったが)気がつくと豪の機体は左1/4くらいのところで変にゆがんでいた。Aラインが1本キャノピー上面を回ってしまったのだ。後から本人に聞いたところによると、逆上がりして直す手もあった、そのままやれるんじゃないかと思ったが外翼が走らず断念した、と残念そうに話していた。


水チンして帰ってきた豪の機体やハーネスをみんなで手伝って芝生に広げて干しにかかる。豪は上半身裸で作業に没頭しているようにみえる。ひと段落して、同行の人たちから、昼食のパニーニを渡され、まだ続く演技に背をむけ、テーブルにひじをついて、黙々とパニーニを齧る豪の姿はなんだかみてられないくらいだった。宮田さんだったら「豪!周りに縦線 入ってるよ」とでも形容するだろうか。明るい日差しのなかで豪の周りにだけ濃い影が見えるような落ち込みかただった。子供みたいな華奢な顔付きに不釣合いなくらい鍛えられた上半身が意外にも白く、それが痛々しげにみえた。

パラ部門の最後に出てきたのは、マイク・クング。まさに格違いの正確さと華麗さだった。すべての技が完全にコントロール下にあって、パラってこういう風に動かすのがまるで普通ってくらいスムーズで、技と技との間ですら流れになっていた。

競技はマイク・クングの精緻な演技でパラ部門が終わり、ハングの部に移った。ハングのアクロはパラほどバリエーションがないが、何人かの選手がものすごい正確さで、わずかな面積のボードに見事にランディングを決め会場を盛り上げた。風向きの関係で、ボードまでのファイナルアプローチが極端に短い。どうみてもハングのランディングに必要な長さが取れていない。それでも、湖畔の観客の頭上をかすめながら、まるで何でもないようにピタッとランディング。椅子の上にたってみていたけど興奮のあまり飛び跳ねてしまう。エディが「やっぱ ああいう奴らはすごい練習してますよ」といったその言葉にものすごい説得力を感じた。



パラ部門の2本目のブリーフィングが始まった。競技はまだまだ続くが、我々はそろそろ空港へ向かう時間だ.。今日もよく遊んだ。豪&カッシーが失格になってしまったのは残念だったけど、大会ってそういうこともあるからドラマチックでいいんだな。
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車は高速道路をレマン湖の反対側までひた走る。合宿終わりの安堵感で緊張感の抜けた田村は終始うとうと。気がついたら空港だった。

エディは一緒の飛行機で帰るのだが、宮田さんと川地さんはあと数日フランスにいるという。今夜はゆう子さんのところに行くらしい。1週間ずーっと一緒にいた人たちとこれでしばらく合えない。この楽しくハードな日々もここで終わり。

楽しかったね、よく飛んだね。天気は上々、サポーターは最高!あまりこの合宿でうまくなったような気はしないけど、なにかがinspire されたと思う。10年もへぼフライヤーをやっていて、まだ続けてられるのはこういう事があるからだ。



空港で宮田さん、川地さんとお別れ。なにからなにまでホントにお世話になりました。そして根性なしの田村をよくぞあそこまで飛ばせてくださいました。明日アネシーで、楽しく飛べるといいですね。PWC終わって、人の世話やいて、運転して、回収して、フリーで飛べるのはたぶんひさしぶりのはず。よいコンディションであることを祈ります。そして決め細やかに気遣ってくれたエディ。エディがいてくれたら世界中どこへ行っても大丈夫ってくらい心強かった。



このすっごい感謝の気持ちをうまく伝えられなかったので、代わりに日記を書いて、今の気持ちをディスクに保存しておこう。きっと次に会ったときは、こんなこと忘れて、またいつもの憎まれ口を利いてしまうに違いないから。特に川地さんにはね。   (おわり)

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