★★★1月2日(木)★★★
エディとタンデム27キロ。逃がしちゃいけないカンガルー。ゴドフリーの日本語はちょっとお下品系。
 
今朝ものたうちまわりながらベッドからおきあがり、いすの踏み台を使って降りる。例のブツのおかげか、秘伝のインドカレーのなせるわざか、昨日より体調はいいようだ。朝から「カレーは2日が美味しい」とドットに頼んで温めてもらった。でも、腰は動きまわるには痛すぎた。ためしに15cmくらいの階段を一段ポンっと下りてみたら、神経にじかに響く衝撃が走り、しばらく手すりにつかまり座り込んでしまう。うーー、痛い。でももうホテルにいるのやだなあ、今日は天気も良さそうだし。でも昨日雨だったから雲底は低いんだよなぁ。どうしよう、とりあえずテイクオフでみんなの飛びをひやかすかぁ・・・。
 
宮田さんがエディとタンデムでどう?って言ってくれたので、その誘惑に抗し切れず、ちょっと迷っていると「大丈夫、テイクオフのときもちゃんとサポートしますから」ってだめ押しで、乗ってしまった。

うーん、ホントにいいのかなぁ。たぶん状況的にはみんなに伝えているより、ずっと深刻なんだけど。

 




でも行くと決めた以上、準備準備。とにかく腰を固める作戦にでる。腰痛ベルトだけじゃカバーできる範囲が狭すぎるから、栗原さんの部屋に行って、さらしもってないですかと聞く。自衛隊医療班もさすがにさらしまでは持ち合わせていなかったが、代わりに三角巾をだしてくれた。貸してくれるだけじゃなくて巻いてくれたりまでしてくれた。これにはちょっと参ったね。でも、まだ不足な感じがしたので、バッグのストラップをはずして巻きつけて、ようやくコルセット並みになって少し腰が安定。よしっ!これで山にいくぞ。
 
Mr.Aは、風邪で完全ダウン。部屋に様子みにいったら相当ひどそうだ。ほんとうにしんどい時って放っておいて欲しいものだと思ったので、医者に連れて行こうかというドットにしばらく寝かせておいてあとでちょっとだけ様子みに言ってね、と頼んででかける。



 
山ではみんな気を使ってくれて、バッシャーに乗り込むときも、つかまるところがある前のほうの席に乗せてくれたり、乗り降りに手を貸してくれたり、荷物の上げおろしも全部やってもらった。ありがたい。でもやはりバッシャーの振動はくるなあ。
テイクオフにあがると、XCコンディションとしては渋いが、飛ぶには十分。タンデムだからフツーならオキラクなだけだが、今日はどきどき。テイクオフ、うまくあわせて走れるだろうか、痛くないかな、田村のせいでエディにテイクオフ失敗させたら悪いし、と不安要素いっぱい。宮田さんがチェストベルトもってサポートしてくれて、緊張のテイクオフ。上手くブローにのってタンデム機は一気に上昇。あー、やっぱ飛ぶのっていい!
まずは、前に出して雲底につける。安定したところでエディがブレークコードを預けてくれるが、気分がすっかり観光モードになっているうえ、雲の周辺で待機するような飛び方がぜんぜんイメージできない。「どうしていいかちっともわかんない」というとブレイクコードを一緒に握って、いろいろ教えてくれた。でも下手をうって高度をロスするのもいやだったので早々にエディにお任せ。自分ではとらないような方法で、弱いサーマルを丁寧に8の字で拾っていく。タンデムは自分の飛びの欠陥を気付かせてくれて、いろんな飛び方を教えてくれて、それはとても楽しいことだが、でもソロのときにすぐにその体験が生かせるほど田村は器用ではない。(そんなことができるくらいなら10年もぶっ飛んでない)
 
気がつくと、タンデム機はボラ山を北上し、ハングの村井さん、鈴木さん、渡辺さんたちと走り始めている。弱いサーマルを探り探りすすんでいるので走り始めたのに気がつかなかった。下をみると羊の牧場を発見。牛や馬はそこら中にいるのになぜか羊はみかけなかったので嬉しい。田村がご機嫌観光モードしてる間に、エディはフライト真剣モードになってきて「チッキショー」とか「コノヤロー」的なことを英語でぶつぶつ言い始める。エディって頭の中は英語で思考してるのかな。
 
 
 
 
 
 

 

 

 

 機体はダム湖の西をかすめまた95号線沿いへ戻ってきた。雲が続かなくて4機そろって27km近辺にランディング。飛んでる間は腰痛はたいしたことなかったが、地面が近づくにつれ降りる瞬間の痛さを想像して全身緊張。エディはすっごく優しくふわっと降りてくれたのに、足からおりる衝撃が腰に響く恐怖に耐えられず思わず座り込んで転倒する。ごめんね、エディ。でもおかげでほとんど痛くなくて一安心。

回収車はすぐきて、95号線をもどり始める。ボラ山から15キロ地点。宮田さんが栗原さんをサポートしながら降りてくるところで止まった。まず宮田さんがランディング。ちょうどこのあたりがサーマル発生源らしくときおり激しい風が通り過ぎる。宮田さんの誘導で、栗原さんの機体も無事降りた。栗原さんは初XCだったそうだ。
まだ時間が早いので、もう1本行きましょうってことで、みんなで西テイクオフにあがる。田村は、今日はもう飛ばない気でいたが、夕方のテイクオフならカンガルーがでてくるというので空身で上へ。パラの人が何人かでて、それなりのコンディションの中、山の周辺をソアリング。須田さんはエディとタンデムで出た。残ったのはハングチームとカンガルー見物の田村だけ。ハングチームは飛ぶのをやめたらしく片付け始めた。カンガルーはなかなかでてこない。まだ時間がはやいのかな。と、空中の宮田さんから、東テイクオフにカンガルーの群れがいるという無線がはいる。歩いて5分くらいの東にむかう。急ぎたいが、動くと痛いのでゆっくり移動。ソアリング中だった鈴木さんはそれを聞いて、西テイクオフにトップランした。松井さんと田村はカンガルーの群れを発見!ようやく見ることができて、なんにも考えずどんどん近づいていったら、いっせいに逃げてしまって、東テイクオフはもぬけのから。無線で「鈴木さん、ごめん。近づいたらカンガルー逃げちゃった。あ、一匹だけ残ってる」「エーっ、その一匹逃がさないようにしといてください」なぜか残った一匹は、ずっと動かず、まるで見張りのように立ち尽くし、鈴木さんの到着までいてくれた。
 
 
お目当てのカンガルーもみれたし、そろそろ日暮れなので下山したいが、バッシャーがこない。テイクオフには誘導中のゴッドフリーと付知のメンバー数人と我々だけになった。すでにコンディション的にメインランに還るのは無理。ハングは畳んじゃったから車で降りるしかない。結構待ちくたびれた頃にようやくバッシャーが着たが、後ろに荷車を引いていないので日本人とパラをぎゅうぎゅう押し込んで下山開始。この西ランディング経由の道がかなりハードで時間がかかる。白糸の下りの10倍くらいハードだ。うー、つらい。上下振動のたびにシートから腰を浮かせて、ショックがこないように踏ん張るがそれにも限界がある。いつのまにか日は完全におち、山は真っ暗で道の状態が見通せない。やばいなあ、腰悪化しそう。途中何度かハングの荷崩れを直したりして、ようやくゴッドフリーの家までたどり着いたときには、田村だけでなくみんなへろへろ。
でも嬉しいことに、ゴドフリーの家の前ではバーベキューの良い匂いが。移動なしで食事ができる。栗原さんがソーセージを焼いていた。「晩御飯、ここでバーベキューだって」
いつきたのかゴッドフリー家のダイニングにはMr.Aもいた。少しは良くなったらしい。
バーベキューディナーのメニューはサラダ3種、ソーセージ、カンガルーステーキ、オージービーフにアイスクリーム。カンガルーは、みんな警戒してちょっとしか取らなかった。田村と中川さんは、半分こしてトライ。うーむ、それほど不味くはないが、あまり食べたくもない、ぱさぱさの鳥とレバ−のあいのこみたいな感じかな。食欲が復帰した渡辺さんは、残すともったいないと他の人の分まで平らげた。ゴドフリーを交えての夕食は最初みんな遠慮していたが、ゴドフリーが誰に教わった日本語なのか、エディを指差し「小さいチ○チ○」を連発し、松井さんはひどく疲れた顔がなんだか怪しいと笑われて(翌日風邪と判明した)下世話な日本のパラエリアと同じようなくだけた雰囲気だった。まったくフライヤーってのはどこ行っても同じだ。
 
明日は今日より地面も乾燥して、風向きも絶好という予報だった。宮田さんが「どう、田村さん今日飛んでみて、痛くなかった?明日行けそう?」「うーん、飛んでる分には問題ないみたい」(パッセンジャーなんて動かないしね)「じゃあ、明日はソロで飛びましょうか」「いやぁ、でもとてもパラザック持ち上げられないし、やめときます」「あ、それならもうぜーんぶやりますから大丈夫です、飛びましょう」「でも、また道から遠いところに下りちゃったら、パラ担いでこれないし」と抵抗するが、エディも「大丈夫って、95号線のすぐ近くに降ろせばすぐ迎えいくから」(でも道路脇におろせなかったらどうなるの?)飛びたくないわけがない。でも自分で自分の面倒みれない奴は飛ぶべきではない。ぶっ飛ぶのは誰にも迷惑かけないからぜんぜん平気だけど、誰かにこれ以上迷惑かけてまで飛びたくない。ずっとそう思っていたけど、飛ばせてあげたい方の気持ちもわかるし、なにより今日タンデムで飛んでみて、やっぱり自分で飛びたくなった。「じゃあ、申し訳ないんですけどそうさせていただきます」
言ってしまってから、自分の阿呆さを悔やみながら、でも明日のコンディションを祈るのだった。




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