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8月15日(木) にわかツインピーカーになった日


シングルの部屋でまだ暗い早朝になんとなく目が覚めてしまって、ぼんやりテレビのニュースチャンネルをみる。なんか地震の災害対策本部みたいなところからレポーターが緊急事態を告げている様子。そしてマウント・レーニエの画像。???。ニュースのタイトルが右端にでている。「マウント・レーニエ GLACIER BURN OUT!寝ぼけた頭でニュースに耳を傾ける。ここのところの暑さで氷河の下部にあるWATER POCKETから水があふれ出し、氷河を破壊し流れ出てしまったらしい。土石流みたいな夜の川の画像が流れる。氷の塊がまわりを削り土砂とともに押し寄せている。昨日でなくてよかったなあ、と思いつつ二度寝。

 

もう一度起きると外はやっぱりガスで真っ白。道路にでるのに必要な視界も確保できないくらいだ。今日は、エリア近くの「Snoqualmie Falls」をみてから、最後のフライトをする予定だ。途中、SUBWAYで軽めの朝食をとってガスの道をノースベントの街を目指す。この街は、TV「ツインピークス」の舞台として有名で、「SnoqualmieFalls」はこの番組の冒頭シーンで出てくる滝だ。水量が豊富なせいもあって、なかなかの迫力。霧が立ちこめるなかミステリアスな雰囲気もただよわせ、一見の価値あり。滝の麓まで降りることもできそうだが我々は滝の上の公園を一周して次の目的地の「ワイナリー」に向う。

SnoqualmieFalls

この「ワイナリー」といのは「ローラとドナのピクニック場所」撮影現場で、Mヤンがなにかのガイドブックで「
Snoqualmie Falls」とセットで記述があったというので行くことにしていたのだ。ところがそのガイドブックがなく正確な場所がわからない。とにかくノースベントの街の中心に向ってはしる。道沿いに「山岳案内所」のようなところがあったので聞いてみたが、あまり有名でないのか分からないという。もらった観光地図にはワイナリーの記載があるが、それが目指す「ワイナリー」かどうかは不明。ノースベンドの街をうろうろする。道が分からずMヤンとヒ○シの見解が食い違い冷や冷やする。ヒ○シも結構ひかないタイプの人だった。

観光地図には街の中心にツーリストインフォメーションのマークがあったのでそこへ望みをかけて行ってみる。宝くじ売り場の箱に観光パンフのラックがついているような小さな建物を、あやうく見落としそうになりながらも発見。下りて道を聞こうとするが、宝くじボックスの奥ではあまりに暇なせいか老人が寝ている。起こすのも悪いので地図をあさっているとさすがに気がつき、

「なにを探してイルんだい?日本人だな。ツインピークスのファンなんだろ」(ぜんぜん違うだけど)
「そうなんです。」
ととっさに話をあわせるMヤン。

「ワイナリーを探しているんです。」 
「ワイナリー? ワイナリーはもうない。」
「もう、ない?」
8ヶ月も前だ。火事があったんだ。とっくにgoneした」
「Winery has gone ・・・」

結構一生懸命さがしたがないはずだ。老人はその後も遠い日本から今ごろ来たツインピーカー(じゃないけど、3人とも)にとても親切で、ツインピークス撮影場所マップをくれた。おまけに記念の地図が折れないようにと丸めてもっていけるよう輪ゴムまでくれた。成り行きでツインピーカーになった我々は、ほかに当てもないのでチェリーパイで有名なカフェでその有名なパイを昼食代わりにすることにした。店にはでかでかと‘あのツインピークスの「チェリーパイ」’ とかなんとか看板が掲げられている。中に入ると普通のダイナーで他の客はハンバーガーやフリスビーくらいの超特大のパンケーキなんかを食べている。我々はもちろん「チェリーパイ」&coffee をオーダー。どんなに甘くて大きいかをか心配してたけど、チェリーの酸味で甘さが中和され、程よいおおきさで○。


これがツインピークスだっ!結構平凡な山です・・・

 

チェリーパイに満足し、我々はラストフライトにエリアへ移動。今日も飛べるのは4時くらいがベストと踏んで、先に今夜の宿探しに走る。エリアのある Issaquah辺りをうろうろしていると、ハイウエイを間違った方向にはいってU ターンが必要な状況に陥ってしまった。ちょっとした路肩スペースに車を寄せたとき、我々は気づいた。こちらにカメラを回しているバイクの警官2人。まずい!職質されたら厄介だ。なんでこんなところで停車したとか、 Uターン禁止とか言われて難癖つけられたらどうしよう。あー、明らかにこっちみてるよ。ここは先手必勝。お巡りさんをみつけて道を尋ねる為に止まったことにしよう。世田谷あたりの一通地獄でお巡りさんにみつかった時、分からなくて困ったふりして切り抜ける、これは田村のいつもの手。思いっきりアホーで困ったJAPNESE の態度で、手にはなにももたず(警官に近づくときはゆっくり車からでて、凶器がないことが明白な態度でないと撃たれてしまう)
「すみませーーーん。(思いっきり、フレンドリーに)日本から来たツーリストなんですけどお、道に迷って困ってまーース。
Issaquahのモーテル探してるんですドぉ、どっちの方向ですかぁ?」警官、ちょっと警戒を緩めて、
「モーテルなら、反対車線を走って、
17番を出たらすぐだ。Holiday Inn と○○モーテルの二つだ。」
もう一人の警官
Holiday Inn のほうがいい
と無難な方を勧めてくれる。愛想もいい。よかった、厄介なことにならずに済んだ。警官のすすめにしたがってちょっと先まで走って
Uターンしてくる。するとさっきの警官は違う車を止めて捕まえていた。なんで捕まえたかは知らないが、我々でなくてよかった。

 

Holiday Inn  はすぐ見つかった。エキストラベッドをいれてもらえることになったので宿代は安く済みそうだ。宿も確保して準備万端。最後のフライトに臨む。

 

ところがエリアに行ってみるとなんと初めての、逆風(南風)がはいっているではないか!!ガーン、ラストフライトはダメなの?エリアのスタッフに今日の見込みを聞いてみると5時くらいには飛べるかも、という回答。どうせすることもないし、待ちの体制にはいる。

 

4時をかなり回った。南風はさっきより弱くなったとはいえまだ、変わる気配はない。このエリアは一応南でも飛べるように南テクオフもあるという。ただし、そこへは少し歩くし、南のコンディションは北の時ほど良くはない。ランディングでうつらうつらしていると他のフライヤーが動き出した。どうやらようやく上にあがるバスがでるようだ。あわてて準備してバスに乗り込む。

 

テイクオフに立つとほぼ無風だった。何機かはでているがステイぎりぎりかタイミングによってはランディングまっしぐら。待ち時間が長かったせいもあってあまり飛ぶ気もしないが、これがラストフライトになるのでやめるはずもなく、しつこく様子見。6時近くになってもあまりかわりばえしない状況なのであきらめて出ることにする。まず、Mヤンがテイクオフ。

私も「無風はやだなあ」と思いながらキャノピーを広げる。無風で出にくいのがあきらかなので地元のフライヤーがキャノピーを広げてくれる。実は私は、後ろでキャノピーをもたれるのがとても苦手だ。早くでなきゃというプレッシャーで、たいていタイミングを間違うし、一発で成功させなきゃいけないという思いで無理目のテイクオフをかけてしまうことが多いのだ。弱いフォローがおさまって無風になったタイミングで、意を決して走り出す。キャノピーはまっすぐあがっている。走れ、走れ、テンションが弱い、浮かない。白糸テイクオフくらいの山の斜面はこの先ヤブが深くなる、
距離が足りない、えーーい、飛び乗りだ---。でスタチン。テイクオフからおよそ7-8m。やべー、やっちゃったよ。僅かな距離だが、急斜面の登りはきつそう。キャノピーをとっととまとめて上をみると、数人がのぞき込んで
「大丈夫か
--?」
と聞いてくるので、
「大丈夫、すぐもどれる。」
と答えると本当に誰も来なくて少し後悔する。急斜面をはいつくばって登っているとヒ○シが頭上をテイクオフしていく。足場が崩れ、思いの外、登りに時間がかかる。息を切らして上にたどり着くと、講習生のテイクオフ前にでてしまって、みかねた校長が最後のひと登りに手を貸し、「誰か、彼女に水をやってくれ」といいながら引っ張りあげてくれた。

数人が「たいしたクライマーだな」とかなんとかいいながら冷やかすが、息を切らして笑うしかない私。と、一人の若い黒髪の男が、水のペットボトルを手渡して、飲めという。その場のいきおいで知らない外人の飲みかけのペットに口をつけてしまうが、相手の男もそういうことはぜんぜん気にならない様子。
「ありがとう、たすかりました。ちょっと休んでからもう一回でます」
と言ってペットボトルを返す。男はあっさり後ろの方にいってしまい、仲間となにやら楽しげだ。クレイジーバンディットの男が近づいてきて
「おまえ、スタチンしたろ」
とからかいにきた表情。でもなんにも言わず
20秒くらい人の顔を見つめてどっかへ行ってしまった。変な奴だ。

 

15分くらいあとに、緊張のリトライ。風はやはり無風に近いが、さっきとちがってフォローが混じることはない。今度は無難にきれいにテイクオフ。後ろでキャノピーをもっててくれた3人に空中からTHANK YOU と叫んで左へ流していく。Mヤンがでたときはまだなんとか回せていた状況だったが、回してもロスの方が大きい。丁寧に丁寧にリッジを拾うがぎりぎりだ。フライトタイム10数分でランディングへ。せめて最後くらいはカッコ良く決めたいとターゲット近くに狙って慎重にランディング。うん、いちおう決まったな。ランディングをみていた何人かが「Girl?と驚いている様子。(Girlではないんだけど、ま、いっか)。キャノピーをたたんでいると知らないマッチョな男が、話しかけてくる。
「ナイス・ランディングだったな。さっきあんたにテイクオフで水をやったのは、オレの兄弟なんだが、
あいつは Japanese girlに恋しちまったぜ」(だからgirlじゃないってば)
どうみても
20代だな、こいつら。でもあえて否定することもないか。

 

次々ランディングしてきて、エリア終了の気配。我々も引き上げだ。校長とスタッフにお世話になったお礼をいう。
1週間ありがとう。明日、日本にかえります。いい
エリアで毎日とべてとても楽しかった。」
「また、来年 来いよ」
堅く握手。珍しく
まじな対応の校長だった。

 

Holiday Inn  にもどり、交代でシャワーを浴びて晩ご飯を食べにでる。時刻は9をまわっていてこの田舎町では営業している店があまりない。唯一営業中で、無難な店ということでIHOPに入ることになった。IHOPは日本ではパンケーキが定番メニューにあるといだけのただのファミレスだが、本来はInternational House of Pancake 、つまりパンケーキが中心の店なのだ。アメリカでは600店舗もあるらしい。シロップもベーシックなメイプルの他にハニー(はちみつ)、ブルーベリーと3種類もテーブルに完備されている。

フライドビーフステーキなるものを頼んだら、合成牛肉のケンタッキー風でちょっとがっかりだったが、セットのパンが変わっていておいしかった。普通のテーブルロールとコーンブレッド(映画グリーンマイルでトム・ハンクスの奥さんが焼いたパン)が3人分計6個カゴに盛られてきた。International House of Pancakeの名前をみてこのコーンブレッドが、パンケーキだと信じて疑わないMヤン
「このパンケー
キ、うまいな」
「オレ、いらないから
2こ食べていいよ」とヒ○シ。
途中Mヤンが席
をたったすきに 
ヒ「たむちゃん、これパンケーキじゃないよね」
田「うん、コーン
ブレッドでしょ。でも機嫌よく食べてるから黙ってた。いいよ別に、あえて訂正しなくても」
ヒ「あ、やっぱり。そうだよね。なんか粒ッっぽいもんね」

でも結局は事実を告げてっしまうヒ○シだった。

 

ホテルに戻り3人でビールを開ける。最後の夜の乾杯だ。夕べのヒ○シ’s ナイトの続きということで、またまたヒ○シ、しゃべるしゃべる。夕べ後悔したんじゃないの?でもヒ○シがこんなに面白い奴とはしらなかった。きっと朝霧でネタにされるに違いない。最後の夜もヒ○シの独演会で幕を閉じた。


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