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6月28日(火)  緊張のノートケッテフライト

この日のことはフライト以外のことはあまり憶えていない。とにかく緊張しまくりのフライトが強烈1な印象で他の事がかすんでいるのだ。

昨日と大体同じ時問に、まずはブロデザイン社へ向かう。中台さんは菊池さんの機体の購入のことでホフバー氏らと話をしていた。どうやら菊池さんはこちらでコンパクトを買うことにしたらしい。みんな昨日飛べなかったので、飛びたくてうずうずしている。今日のコンデションはどうなんだろう?ちょっと強そうにもみえるけど。プロデザイン社からは、ノートケッテがよくみえる。外に出てノートケッテの風のぐあいはどうかなとながめていると、いたっ!黄色いパラが確かにノートケッテを飛んでいる。あまりあがってはいないようだが、そこそこの飛びだ。「中台さ一ん、早く飛びにいこうよー!」外人相手の商談は本当にのんひりしていて、いつ終わるともしれない。飛びたい気持ちは高まる一方。ホフパー氏らとの話が終わると一目散にノートケッテへ車を走らせる。


ノートケッテのランディングはテイクオフから5kmも離れた所にあり、車を一台先に回して置かないといけない。。中台さんと岸さんが2台で車をランディングまで回しにいってくれたので、二人が戻るまでカフェテラスでお茶をする。
気持ちははやるが、このすごすぎるノートケッテエリアを中台さんぬきで飛びたい者は誰もいない。幸い天気は非常によく、すぐに悪くなるとも思えない。

このとき入ったカフェテラスは、とにかくもう花でいっぱいのガーデンカフェで、ツアー中最も気に入った場所のひとつだ。二人乗りプランコになっている椅子や丸いチェアーや石像が芝の上にゆったりと配置され、低い木々が心地好い木陰をつくっている。フライトに来たのでなければ一日中いたいくらいだ。思わず花に埋もれたぶりっこ写真を撮ってしまう。30分程して中台さん達が帰ってた。いよいよノートケッテフライトだ。

ノートケッテの中間駅のカフェにて

ホントにご機嫌な場所です。この10年間行った場所の中でもピカイチです。
 



テイクオフは二つ目のケーブルを下りて少し横に歩いたところにある。切り立った岩場やごろごろした岩を横目にしながら、白い瓦礫の斜面を黙々と歩いて5-6分でテイクオフに到着。緊張の為かみんな寡黙である。足尾のテイクオフくらいの斜度の草地が広がっていて、なかなかよさそうなテイクオフである。既に地元のフライヤーが二人ほどきている。平日のせいかあまり賑わっているという感じではない。
アバウトな中台さんが、珍しく慎重な注意事項を言う。顔は笑っているが本当はものすごく心配なんだろう。
【中台さんのエリア説明&注意事項要約】
高度差は1200m。ランディングは5q先の牧草地。ここは結構狭く直ぐ先が低い丘になっていて下ろしにくいことがある。回りも牧草地なので無理にインしなくてもいいがその場含アウトサイド料が必要。さて見た通り、後ろは断崖絶壁3000m級の山が続くので間違っても山の後ろには絶対に行かない二と。尾根の上でつぶされても帰ってこれる安全マージンをとること。万が一おちたら歩いては帰ってこれません。左前方のインスブルック空港に離着陸する飛行機は、テイクオフレベルよりも低いルートを通過していくので、高い高度でランディングに向かわないこと。高度処理は山ぎわで行い、ランディング上空へは150m以下で進入してください。飛行機にひかれたら痛いです。エリアが向こう100年閉鎖になります。


というわけで、地形の凄さもさることながら、飛行場の直ぐそばというプレッシャーが重くのしかかる。風は割と強めで、日射は強くどこもかしこも上がりそうだ。はたして山Iがわなんかで下ろせるのか?不安を抱えながらも、ビッグエリアの誘惑は強くとても止めようという気にはなれない。まずは、はやる心をおさえ切れない村松さんがスタート。彼はハィになると思いきった行動に出るフライヤーだ。普通こういう時は様子をみて中台さんか岸さんあたりがダミーをやってくれるのを待つもんなんだけど。あっという間に50〜100あげて左の方へながしていく。無線が入るが声が異様に明るい「綾線の高さを越えてます!後ろの山がはっきり見えます。いま、アイスクリームの山です。」調子にのってどこまでもいってしまう。次に中台さんがコンテストでスタート。白い機体が数秒で、頭上はるか上になる。鈴木さん、清野さんが続く。村松さんから無線が入る。「(風が強くて)最悪ランディングに戻れないかもしれません。畑に緊急ランして歩いてかえります。」おいおい、大丈夫なんだろうな?(幸い、彼は上げ直して帰る事ができた)フライト中の鈴木さんから「イントラ以外はちょっと飛ばないほうがいい」との無線がはいる。中台さんの無線が故障中なのが指示が入らないので、鈴木さんが空中で直接話して聞いたらしい。あ一、出そこねた。それほどやばい感じじゃないんだけど・・・.諦めきれず、すぐにも出る気でいた辻さんと私は機体を広げたまま待機


しばらくして中台さんがランディング。風は心なしかおさまった感じがする。辻さんと「出れそうだよね」と確認。アーん、怖いけど飛びたいよーとじりじり「すいません!田村出てもいいですか」と催促する。岸さんは止めたそうな顔をしているが、中台さんの一応のOKが出たのでテイクオフ。とにかくまず山の後ろに飛ばされないよう、テイクオフレベルよりも上げないようにして前へ出さなくっちゃ!ところがこれがなかなか難しく、どこへいっても下がるところがない。やっぱり出るべきじゃなかったかな、ここでなんかあったらどうしょう?と早くも後悔。石松さんの無線。「ヘリコプターがそっちへいきました」え一っ、どこどこ!?近づかないよね、まさか。あっ、次はグライダーがくる!早くおりなくっちゃ。気はあせるが高度はいっこうに減らない。

翼端を折ったりアクセル全開にしたり、とにかくやれるだけ(といっても限られているけど)やってみる。テイクオフから25分。ようや500を切って少し安心する。500くらいの対地高度だったら普段から飛んでいるので感覚的に慣れているせいだろう。普段2-300mのエリアで飛んでいるので、いきなり1000mのエリアというのはどうも勝手がちがい、目で見ただけでは自分の高さがよく把握できない。400ぐらいになってもう大丈夫と思い、回りをみわたすといつにまにか、岸さんもでたらしく、はるか上を飛んでいる。いきなり翼端をおったりしているところをみると、まだ強いようだ.こっちも少しでも気を抜くとすぐ上がってしまう。シンクを捜しまわり、そこでまわす。パラって少しでも上がることを考えるスポーツじゃなかったっけ?なんか出てから下ろす事ばかり考えているので妙な気になる。高度が100を切ってランディングの直ぐ手前の林にいく。あと少し、あと少し。しかし上空よりも下の方が風が強く、これがなかなかさがらない。しかも、やっぱり荒れているのだ。チャレコンがあおられるのを何とかおさえる。あせっちゃだめ、必ず下りれる!「大丈夫、大丈夫、」空中で自分を励ます。ところどころ中台さんが無線で誘導してくれる。テイクオフから45分。規定のランディングゾーンにははいらなかったが、隣の牧草地にセーフティランディング。あ一、生きててよかった.!!こわかったけど最高!ランディングで見守っていてくれたみんなに「ありがとうございました一」と頭を下げる。パラをやってて一番ご機嫌なのはこういう瞬間だ。その後、辻さんがランディング体勢に入る。強風にあおられ予想以上にファイナルアプローチがのび、危うく小屋にぶつかりそうになりながらも、かろうじてセーフ。鈴木さんはさすがのアプローチで、みごとインかと思いきや、あと数メートルのところでアウト!さくらんぼの木の下で我々のフライトを見ていた地主のおじさんは、喜んで手を叩いて笑っていた。(彼はアウトサイド料が入るので御機嫌らしい)


結局この日、ノートケッテを飛んだのは、7人で菊池さん、石松さん、清野Jr君は、フライトを断念した。テイクオフに残った3人と合流し、飛べた組は、興奮のノートケッテフライトの話で盛り上がる。ツアー3日目まで、全員そろっていてよかった、よかった。

この日は少し早めにホテルに帰れたので、シャワーをあびてから、夕方のフルプメスの村に散歩にいく。といっても本当に小さな村なのでいくところは教会とその回りのお店くらいだ。教会を少し覗かせてもらったが、夕方の礼拝の時間なのか村の人がいて熱心に祈っている。観光気分で入ったことが少し後ろめたい。ここでは信仰がまだちゃんと生きていて、生活の一部なのである。教会の裏庭の墓地にもはいったが、どのお墓も綺麗に磨きあげてあり、よく手入れされた花が植えられている。我々が見学している間にも、お墓まいりの人が何人もやってきては、水をかけたりしている。きっと毎日の日課なんだろう。とても日常的な風景にみえた。夕暮れの涼しい風に吹かれて、山Iと花とに囲まれた小さな村での信仰にみちた生活を思った。

散歩からかえって、みんなで村のレストランにいく。時間帯のせいか混んでいて残念ながらテラスではなく、屋内の席になる。昨日のガーデンレストランほどではないがメニュは割と多い。私はこの日はアメリカンステーキ(どこがアメりカンなのかよく分からない)のフライドポテト添えにしたが、ポテトがマックポテトのLサイズほどもあるので、驚いた。この店もはずれの料理はなくて、大満足。お肉料理はほんとに何でもおいしく、お互いの料理を交換しあって、これもいいけど、そっちもいいと、皿回し状態となった。

本日の出費:ノートケッテとゴンドラ(片道〉1250円、お茶代(オレンジザフト)400円、エリアア使用料500円、アウトサイド料500円、
夕食(ステ一キ&サラダ&ビール等)2000円
どうやら昼ご飯を食べそこねたようだ・・・ 計4650円







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